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居ないとは思うが、将来の夢を聞かれて 正義の味方 って答える人には聞いて欲しい。 今現在、正義の味方をやっている俺の・・・ ごく普通の日常を! ファイト! 〜戦う君の歌を戦わないやつらが笑うだろう〜 その日はいつもとかわらない朝だった。 起きて、身なりを整えて、居間に行ったら妻がすごい剣幕で詰め寄ってきた。 「もううんざりなのよ!」 「なんだよ、急に!」 「・・・毎日毎日怪人怪人って、あなた24時間以上家にいることあった!? あなた、この子にミルクやったこともおしめ取り替えたことも無いでしょ!? そんなに怪人が大事なら怪人と結婚しなさいよね!・・・」 やばいな、大分頭にきているみたいだ。 いや、俺が悪いのは明らかだから妻の方が正しいのだが・・・。 でも、「地球と私とどっちが大事なの?!」は無いだろう・・・。 「そもそも、いつになったら平和になるのよ!いくら倒しても次から次へと出てくるじゃない!」 「そうだよ、次から次へと出てくる怪人を倒すのが仕事なんだよ!」 何回も、言っているはずなんだけどな。 やっぱり、わかってくれないか。 「あたし達の生活はどうなるの・・・!」 「それは・・・確かに、この歳で無職ってのはまずいと思ってるよ? でもな、怪人と戦いながら出来る仕事って中々無いんだよ!」 「―離婚しましょう」 おいおい、流石にそれは無いでしょう。 そんなに甲斐性無しですか。 否定は出来ないのが情けない。 それから妻は未だ幼い我が子の将来を話し始めた。 “父親は死んだと伝える”“立派な戦死”“この子は立派な弁護士になるの”―。 挙句の果てには暴力の時代は終わって言論の時代とまで言っている。 ぼーっとそれを聞いてると、携帯電話が鳴った。 「・・・2号?何だって―わかった!」 それは2号からのSOSの電話だった。 エキサイトしている妻には申し訳ないが、水を差させてもらう。 何よ、と冷たく言い放たれたが関係ない。 「今、外で2号が1人で戦っているんだ。それを助けに行くから・・・話は帰ってから聞く!」 「待って!」 制止する妻の声は無視して、俺は外へ飛び出した。 「馬鹿ぁ!ろくでなしぃ!人殺しぃ!おまえなんか死んじまえぇぇ!!」 そんな叫び声をBGMにしながら・・・。 家を出て直ぐ、俺は階下に住んでいるという蜘蛛野という男と鉢合わせた。 こんな近所に住んでいたのに、今まで顔すら見たことがなかったのが驚きだ。 おはようございます。早いですね。急に用事で呼ばれてしまいまして・・・ 僕もなんですよ―東京駅まで。そうなんですか、僕もなんですよ―! そんな会話をしながら階段を下っていって、俺は駐輪場へと向かった。 「あ、バス―!」 少し遠くのほうで、蜘蛛野さんの声がした。 そちらに目をやると、バスが点の形に見えた。 「東京駅までなら送りますよ―!」 「いいんですか!」と歓喜の声が聞こえた。 いいも何も、急用のはずだ。俺は叫んだ後、愛車を転がして蜘蛛野さんの方へ向かった。 だんだんと蜘蛛野さんの驚いた表情が近くなっていく。 「どうも、すみません」 本当に申し訳なさそうに頭を垂らす蜘蛛野さんにちょっと笑いが込み上げた。 「困った時はなんとやら」 俺はそういって、蜘蛛野さんをバイクに乗るよう促した。 蜘蛛野さんは俺のバイクを凝視していた。 そんなに派手だろうか。まぁいい。俺はバイクを走らせた。 俺のバイクは風を切る速さを出して、暫くしないうちに東京駅についた。 適当な所にバイクを停めると、蜘蛛野さんを降ろした。 「ありがとうございました。では」 「じゃあ、気をつけて」 短い会話を終えると、蜘蛛野さんは遠目に見える狭い路地裏へと吸い込まれていった。 それを遠目に見ながら俺もバイクから降りると、すぐ側にあった脇道に素早く入る。 その道に人気がないことを確認し、俺は“ライダー1号”となった。 ライダー1号。 ヘルメットとイカスなスカーフを着用した、ナウい正義の味方だ。 俺は念のため、辺りをもう一度だけ見回してから急いで2号の元へと向かった。 電話で聞いた場所が近くなり、張り詰めた空気になった。 そして、俺は2号を見つけた。もう1つの影と共に。 影―蝙蝠男だ。この怪人は弱い部類には入るが油断すると痛い目を見る。 あっ! 俺は思わず大声を上げるところだった。 目と鼻の先程の近さになった戦場の中で、2号がボディーブローを喰らった。 はやる気持ちを抑えつつ、俺はタイミングを見計らって蝙蝠男に飛び蹴りを放った。 「ぎゃ」と蝙蝠男が音を出す。 と、同時に影が差した! 反射的に上を見上げるとクモ男の姿があった―! 「ぐっ・・・」 まともにクモ男の攻撃を喰らってしまった。 が、怯むより先に脚が出た。 ハイキックを反撃として繰り出したが、クモ男は巧くそれをよけやがった。 「アンタには悪いが、蝙蝠男は殺させない」 「―何が目的だ!」 「ショッカーの復活だ」 「ショッカーは滅んだはずだろう・・・!」 クモ男の、情も何も無いような声が耳に刺さる。 ヤツは俺の言葉にこう答えた。 「ひょっとして、ここが足りてないんじゃねぇのか? いいか、俺と蝙蝠男さえ居れば再建なんていくらでも出来るんだよ。 それとな、お前、他人の話はちゃんと最後まで聞こうぜ」 「何を言って―」 意味がわからなかった。 それが顔に出ていたのか、クモ男は嘲笑を浮かべて俺の言葉を遮る。 「俺たちの目的にはな、お前を殺すことも含まれてるんだぜ―死にな!」 死にな、と言いながらクモ男が襲い掛かってきた…! それを間一髪避け、回し蹴りを放つ。 が、先の反撃同様、クモ男はそれも巧く避けると俺の目の前に手のひらをかざした。 俺は不覚にも一瞬怯んでしまった。 クモ男の手の指の隙間から勝ち誇ったようなヤツの笑顔が覗けたその瞬間―! シュルシュルッ 衣擦れするような音が立ったかと思うと、俺の視界は真っ白になった。 が、意識はしっかりとある。 ヘルメットに手を宛がうと、べたっとした感触があった。 「どうよ、蜘蛛の糸は」 クモ男のサディスティックな声が響いた。 「女郎蜘蛛の糸だから強力なんだよなぁ、それ。ま、頑張って解いたらいいんじゃねぇかな」 じゃあな、と後ろに付け足してクモ男は身体を反転させた。 「まて、クモ男!!」 そんな声も空しく、辺りに響くだけだった。 |