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ファイト!クモ男編 〜たたかう君の歌を戦わないやつらが笑うだろう〜 「じゃ、行ってくる」 クモ男がそう言うと、彼の妻は表情を曇らせた。 それに気づいたクモ男は玄関の扉を開けずに、その表情を見つめた。 暫くして、視線の先の唇が動いた。 「もう、止めてよ・・・世界征服なんて」 ぴく、とクモ男の片眉が上がった。 「今更何を言うかと思えば・・・」 「別に、あなた一人居なくたっていいじゃない!」 「みんな、ライダーにやられたんだ」 「そんな・・・だからって、あなたまでやられに行くことないでしょう!」 まいったな、とクモ男は思った。 今、彼の妻は周りが見えないほどに興奮している。 不安と、不満と、それを掻き消す気持ちに押し潰されているのだろう。 クモ男は彼女を刺激しないように、慎重に彼女に言った。 「俺は、必ず戻ってくる」 「そう言って皆、倒されてるじゃない!」 「それは・・・」 しかし、その努力も実らず彼女は余計興奮してしまった。 ああ、どうして・・・。自然と眉根を寄せてしまう。 「ねぇ、考え直してよ・・・」 縋りつくような声に、心が揺れる。 同時に浮かび上がるのは、親友の姿。 一瞬の葛藤を終え、クモ男はきっぱりと言った。 「今、仲間が一人で戦っているんだ!話は帰ってから聞く」 そう言い残し、クモ男は家を飛び出した。 そして、彼女は小さくなっていく夫の背中に向かって叫んだ。 「馬鹿ぁ!ろくでなし!人殺し―!お前なんか死んじまえぇえ!!」 妻の悲痛な叫びを背に受けつつ、クモ男は蝙蝠男の居る場所へと向かった。 家を出て直ぐ、上の並びに住んでいる磯野という男と鉢合わせた。 おはようございます。早いですね。急に用事で呼ばれてしまいまして・・・ 僕もなんですよ―東京駅まで。そうなんですか、僕もなんですよ―! そんな会話をしながら階段を下っていくと、蜘蛛野の乗るバスが出て行く姿が見えた。 「あ、バス―!」 蜘蛛野がそう叫ぶと、駐輪場の方で磯野の声が響いた。 「東京駅までなら送りますよ―!」 「いいんですか!」と言いながら、蜘蛛野はその声の方向を向くと磯野がバイクを手で転がして来る様子が目に入った。 そのバイクを見て、蜘蛛野はあれと思った。このバイクは、見たことがある―。 ぼうっと磯野のバイクを見ていると、とんとんと腕を小突かれた。 そして磯野に促され、蜘蛛野は後ろに乗り込むと間もなくエンジン音が轟いた。 「どうも、すみません」 「困った時はなんとやら」 やがてスピードを上げて、磯野のバイクは風に乗りはじめた。 風を切る、とはよくいったもので本当に一瞬の間で東京に着いてしまった。 蜘蛛野は駅の手前で降ろしてもらうと、“クモ男”になった。 そして、急いで蝙蝠男の居る場所へと向かう。 上下に揺れる視界の中、遠目に見覚えのある黒マント姿が見られた。 もう1つ人影が見える―ライダー2号だ。 蝙蝠男がライダー2号にボディーブローを喰らわせる! よし、ナイス―! そう思ったのも束の間、蜘蛛野はサーッと血の気を引かせた。 自分の居る逆方向からライダー1号が蝙蝠男に跳び蹴りを喰らわせたのだ。 すかさず距離を縮めて蜘蛛野が飛び掛る! 1号は予想の範囲外のことが起きて面食らった表情をしている。 その隙をついて、蜘蛛野は蝙蝠男を自分の後方へと促す。 間髪入れず1号が反撃を繰り出すが、それを巧く避けた! ふ、と笑みを浮かべると蜘蛛野は言った。 「アンタには悪いが、蝙蝠男は殺させない」 「―何が目的だ!」 「ショッカーの復活だ」 「ショッカーは滅んだはずだろう・・・!」 蜘蛛野はまっすぐこちらを見てくる1号に軽く嫌悪感を抱いたが、 くくくと低く笑いながら自分の米神を突いてこう言った。 「ひょっとして、ここが足りてないんじゃねぇのか? いいか、俺と蝙蝠男さえ居れば再建なんていくらでも出来るんだよ。 それとな、お前、他人の話はちゃんと最後まで聞こうぜ」 「何を言って―」 1号に言葉を言い切らせないようにして蜘蛛野はぴしゃりと言い放った。 「俺たちの目的にはな、お前を殺すことも含まれてるんだぜ―死にな!」 死にな、と言いながら蜘蛛野は1号に襲い掛かった―! それを間一髪避け、回し蹴りを放つ一号。 先の1号の反撃同様、蜘蛛野はそれも巧く避けると1号の目の前に手のひらをかざした。 一瞬怯んだ1号の様子を感じ、「勝った」と笑みを浮かべる。 その笑みが1号の視界に触れたその瞬間― シュルシュルッ 衣擦れするような音が立ったかと思うと、1号の視界は真っ白になった。 が、意識はしっかりとある。 1号がヘルメットに手を宛がうと、べたっとした感触があった。 「どうよ、蜘蛛の糸は」 蜘蛛野のサディスティックな声が響いた。 「女郎蜘蛛の糸だから強力なんだよなぁ、それ。ま、頑張って解いたらいいんじゃねぇかな」 じゃあな、と後ろに付け足して蜘蛛野は身体を反転させた。 視線に蝙蝠男が入った。 少し顔色が悪いようだったので、背中を押してやりながら蜘蛛野はその場を後にした。 |